ひとり、でした。不意打ちの、ひとり、でした。ふんばりました。
なんでも自分ひとりで、やってしまう性格が呼び寄せるのか。ひとりでも平気だったのか。なんて。
麻酔で、ぼーっとしたままの”がん”宣告
カメラ検査も終わり、着替えて、待合室でお待ちくださいと。
まだ、ぼーっとしたまま、待つことに。
さっき「お腹切る?」って言われたような。どういう意味だろう。
20分ぐらい待っただろうか。
待合室には誰もいなくなり、たぶん診療時間が終わったであろう静けさ。
そこに、先ほどの大腸カメラの時の先生とは違う、前回の若い真面目そうな先生が現れた。
大腸空っぽ下剤キットを説明してくれた前回。今回で2回目の対面なので、そんな親近感もない。

・・・・・
促されるままに、誰もいない、だだっ広い場所の、パソコンの前に座るように、と。
少し先には、先ほど私が横たわってカメラ検査されていたベッドがあり、壁を隔てて、いくつかベッドが並んでいるのも見渡せる。
けど、先ほどのように、ほかに検査をする人も、看護師さんも、誰も、いない。
こんな、だだっ広いなかに、先生と2人きり。
シーン。
“がん”宣告って、もっと深刻なものかと思ってた
先生と、ハの字のように横並びに、パソコンに向かって、座っていると。
真面目そうな先生が、とっても暗い顔で、とっても低い声で、話し始めた。

これですね。これ。
(パソコンの画像を、見せながら)
さっき撮影したであろう私の大腸の内側、が映し出されている。
赤くなっているところ、を指さしながら、
「これ、悪性ですので、お腹を切って、手術して・・・・」
(普通に話してるけど、いま、悪性?って言った?)
後半は、先生が何を言ってるのか、全く入ってこなかった。
(悪性?悪性?悪性?悪性?悪性?)
いつのまにか、先生の話も終わっていて。でも、私の思考は止まっている。
しばらくの沈黙。どちらも、なにも、話さない。
何分ぐらいたったのか、時間も止まっていたように感じる。
ようやく動き出した思考で、ゆっくり、念のために、確認してみる。
おくのこ「悪性、って。私、”がん”、ですか?」
先生「はい・・・・」
シーーーーン。
おくのこ「・・・・(完全に思考停止)」
突然すぎる!
たぶん、さっきの悪性と言われたあと、一通り説明してくれたと思うんだけど、
途中から、思考停止した私には、なにも聞こえていない。
“がん”という事実しかなく。言葉が出ない。
物音ひとつしない、静かな時間が流れて。
しばらくすると、先生が、そぉ~っと話はじめた。

・・・こんなに、なるまで、なにか、気づかなかったですか?
身体の異変は、なかったですか?
おくのこ「・・・・」
気づくはずもない。異変なんかない。いつも通りの毎日だった。
昨日と今日で何が違うの?!自分の身体に聞きたい、何が違うの?!
表情も身体も固まってるのに、心臓はバクバクしていた。
涙は、でなかった。
無言から、どれぐらいの時間がたったのか。
こんな状況でも、人に頼るのが苦手な私らしく「しっかりしないと」と、気を張っている自分がいる。
まだ、涙は出ていない。
心の中で必死に平静を装ってると、先生が話しはじめる。
手術の詳細な説明があるので、次回は必ず、ご家族の方と一緒にきてください。と。
「はい。わかりました」とだけ、声が出た。
遠くから聞こえてくるような、自分の声ではないみたいだった。
こんな状況でも、「しっかりしないと」という思いが勝ってる自分に、びっくり。
そのまま、また、外で待つことに。
重い扉を開けた外、今度はいつもの診察室前の待合室。いつもと同じ、総合病院の廊下。
たくさんの人が診察を待っている。そこは、いつもと変わらない日常だった。
変わらない日常なのに、おくのこだけが状況が変わりすぎて、夢だったのかな?と思ってしまう。
まだ、ぼーっとしている。
いま思えば・・・
がん宣告の前と後。何が違うって、自分が知ってるか、知らないか、だけのような気がする。
自分が知っても知らなくても、”がん”は私のなかにいたんだ。って不思議。
そんなことも考える余裕のなかった自分を、思いっきり抱きしめてあげたい。


